末梢血幹細胞移植のドナーについて知りたい!
私と妹の間でおこなわれた「末梢血幹細胞移植」。
わたしも妹も看護師であるにも関わらず、詳しい治療内容については、全く無知の状態でした。
看護師の私達でさえそうなのですから、医療に関わらない人がこの治療を知るはずもありません。
今回は、この「末梢血幹細胞移植」について知っておくべき 10のポイントでまとめます。
記事を書いているのは、イギリス在住で元看護師、白血病を患った妹のドナーとなった経験のあるアルノです。末梢血幹細胞移植のドナーとなる人や受ける人の参考になればさいわいです
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末梢血って何?
末梢血とは、腕や足など体中の血管を流れる血液のことです。
末梢血幹細胞移植とは?
簡単にいうと、骨髄ではなく「ドナーの血管を流れる血液(末梢血という)から造血幹細胞(血液をつくるモト)をとってきて患者へ移植する方法」です。
末梢血幹細胞の歴史は?
歴史的にみてみると、末梢血中に造血幹細胞があることがわかったのは1980年代で、日本では1990年後半になって積極的な臨床がはじまった比較的新しい治療方法なのです。
自家移植から発展した技術です。
そして、骨髄移植と比べるとドナーの負担も軽いとされ、今後さらに広まっていくであろう治療方法です。
誰がドナーになれるの?
もともとは、自家(自分)と、同種(血縁者、特に兄弟姉妹)のHLA型の一致者がドナーとなれました。
わたしは、姉にあたるので同種ということになります。
この治療が始まったころの同種末梢血幹細胞移植は血縁者からのみの採取でしたが、2010年より骨髄バンクのドナー(非血縁者)からも採取可能になりました。
ドナーはどんなことをするの?
末梢血の中にある造血幹細胞は、ごくごくわずかです。そのままの数では移植の意味がない。
では、どうするかというと、、、?
ドナーに入院してもらい、白血球を増やす作用のある薬(顆粒球コロニー刺激因子:G-CSF)を毎日5日間注射(皮下)します。
そうすると、血液中に造血幹細胞が増えます。
血液検査により、植後の生着に必要な十分量の造血幹細胞が増えたことが確認されたら「血球分離装置」という成分献血のときにつかうような機械で、ドナーの血液を採取します。
このドナーの末梢血から採取した造血幹細胞を、患者に移植するのです。
ドナーに痛み・負担はあるか?
実際に妹の末梢血幹細胞移植のドナーとなったわたしの率直な経験談を紹介します。
まず、痛みについて。
【痛みがない】といえば嘘になります。
まず毎日のG-CSF皮下注射の時の腕に注射針を刺される時の痛み。
また、薬の副作用もあらわれます。(でない人もいるようなので、個人差があります。)
私の場合は、入院3日目くらいから腰の痛みを感じるようになり、歩きづらくなって、まるで妊婦さんのような歩き方なりました。
そして、採取の時の痛みと不快感。
幹細胞を採取するために、腕か大腿部の血管に少し太めの点滴を2本刺します。この成分献血のようなことを1回2~3時間。
十分な幹細胞が一回で取れなかった場合は、もう一度2~3時間。
この採取時の痛みは、ドナーの体調や精神状態、ドクターの手技にもよります。
わたしはこのとき大変な思いをしましたが、無事終了すると、なんともいえない達成感。あとは、移植が成功することを願うばかりでした。
末梢血造血幹細胞移植のメリットは?
末梢血造血幹細胞移植の患者さんと、ドナーとなる人のよい点を紹介します。
ドナーにとって
・全身麻酔をする必要がないので、ドナーの体への負担が減る(骨髄移植は全身麻酔が必要)
・ドナーによっては全身麻酔が好ましくない人もいが、そんな人からも採取できる。
患者本人にとって
・GVH効果(移植片対白血病効果)が期待できる。
・移植後の白血球・血小板の回復が早い(骨髄移植とくらべて)
・GVH効果(移植片対白血病効果)とは、造血幹細胞移植をした後に、ドナーのリンパ球が患者の白血病細胞を異物とみなし、攻撃することで得られる抗がん効果のことです。
この細胞下での攻撃は患者にとてつもない苦しみを与えますが、しかしこれにより、がん細胞が縮小または死滅し、再発の予防が期待できるのです。
末梢血造血幹細胞移植での危険性はあるの?
ドナーにとって
・白血球を増やす薬(G-CSF)の副作用がある
・血液採取のときに中心静脈カテーテルを留置される可能性がある
白血球を増やす薬(G-CSF)の副作用は以下のとおりです↓
特に脾臓は入院時の検査で、薬剤に耐えうるかチェックされます。
わたしが感じた私におこった副作用は、腰痛、関節痛、背部痛、倦怠感です。
血液採取のときに中心静脈カテーテルを留置される可能性があることについては…
私の場合は、腕からの採取がうまくいかなかったため、大腿部(足の付け根にある太い静脈)からいれることについて同意をしました。
腕からの採取がうまくいけば、この大腿部からの中心静脈カテーテルは必要ありません。
ちなみに私は2回めの採取で中心動脈カテーテルをいれました。
次に患者さんにとって注意しなければならないポイントを紹介します。
患者本人にとって
・慢性GVHDの頻度が高い(生存率や再発率との関係は不明)
ドナーの治療費の負担など金銭的負担は?
末梢血幹細胞移植のドナーの入院費や血液採取費用は、患者の治療費に包括されます。
ドナーの金銭的負担といえば、最低でも5日間入院することになるため、もし会社員や働いていた場合、その間の保障はない、ということです。
患者は安全に移植が行えるのか?
どのような移植であれ、移植後は拒絶やGVHDなどの移植免疫反応が心配されます。
その症状が致命的になることもあり、またその他にも感染症や治療による臓器障害などいろんな合併症が考えられます。
また、兄弟姉妹間ではないドナー登録での移植では、合併症の重度、頻度も高くなるといいます。
ドクターや家族とよく話し合い、当事者同士が納得して決定することが重要です。
まとめ
以上、末梢血幹細胞移植について 最初に知っておおくべき10のことを紹介しました。
末梢血とは何か?移植の歴史やドナーになれる人、ドナーの痛み、患者への治療法、金銭的負担など、、、末梢血幹細胞移植を考えているすべての方は、ぜひ参考にしてください。
末梢血幹細胞移植は、まだその治療を行える施設もこれから増えると考えられます。
ドナーとなることを決めた方は、不安も迷いもあると思います。
すべては自分が責任をもって決めることが一番だいじだと思います。
▶『白血病について最初に知るべききポイント』はこちらの記事が参考になります。
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