骨髄移植について、初めに知りたかった8つのこと

急性骨髄性白血病の「M6」と診断された妹、予後の悪いタイプの白血病であり、入院と同時に骨髄移植が検討されました。

入院時当初から骨髄移植の説明があったため、私達家族は「骨髄移植」「末梢血幹細胞移植」について調べました。その頃のわたしたちは「移植」という言葉を聞いただけで、なにやら大きな大手術が行われるような、なにがなんだかわからない不安の真っただ中で生活していました。

看護師免許をもつわたしたちでも、血液内科に関する仕事をしていたわけではありません。骨髄移植、白血病の病態について基本情報や大まかな看護方法はわかるものの、実際の治療や入院の様子などの詳細は知りませんでした。

そして、頭の中はごちゃごちゃ!入院の手続き、職場や学校への手続きや挨拶などやるべきことも山積みでした。

当事者は、とにかくやること、考えることが多いため、じっくりこの病気について調べる時間がありません。そして頼みの綱の情報源は多くの方の場合インターネットだと思います。しかし、情報の鮮度・正確さ・状況はわからず、少ない情報、ときには多すぎる情報の中でどの情報に頼ってよいの検討がつかず、ただ時間だけが過ぎ去っていく毎日でした。

わたしたちの経験をとおし、当時のわたしたちが、骨髄移植について、簡潔にわかりやすく知りたかった情報を8つ、まとまてみました。


骨髄移植について、初めに知りたかった8つのこと

Q1.簡単にいうとどんな治療

白血病を治療するための、最も強力で最も有効な治療法といわれています。
別の言い方をすれば、血液疾患者の病的な骨髄を、骨髄提供者(ドナー)の正常な骨髄細胞に入れ替える治療のこと。

Q2.大手術

ドナーから採取した正常な骨髄液を、静脈から患者に点滴(輸注)します。移植というと大手術になるのではないか、と思われる方も少なくないですが、本人からすると輸血をされているような感覚です。


Q3.骨髄移植の全体的な流れは?

移植前処置(約2週間)→移植当日→生着(移植後3~4週間)→無菌室から一般病室へ(だいたい移植後1か月で移動)→経過良好なら退院という流れです。

①移植前処置(いしょく ぜんしょち)

患者は、骨髄移植の約2週間前から、移植の準備として、致死量ともいわれる超大量の抗がん剤の投与や放射線の照射を受けます。その結果、造血幹細胞は自力で回復できないほどに破壊され、 血液が全くつくられなくなります。

前処置前には、中心静脈カテーテル(前の胸部から心臓に近い太い静脈があります。その太い静脈に点滴ルートを挿入する処置のこと)のが入れられます。骨髄機能が破壊されると免疫力が低下し、感染症などにかかりやすくなるため、無菌室(クリーンルーム)でへ移動し、治療もクリーンルームで行われます。

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移植当日

ドナーから採取した骨髄液を、2~4時間かけて患者の静脈から点滴します。この点滴が骨髄移植です。(さい帯血移植の場合、点滴時間はさらに短い)

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 3)移植後から退院

移植後は、無菌室(クリーンルーム)で拒絶反応や感染症などに注意しながら、安静に過ごします。
だいたい3~4週間後に移植された骨髄液が働き始め、正常な血液をつくるようになる(生着|せいちゃく)し、容態が安定すると、一般の病棟に移されます。そこで良好な経過をたどれば、退院し、通院、社会復帰することができます。

退院までの期間は、患者それぞれの状況により異なります。

Q4.なぜ「造血幹細胞移植」、「末梢血幹細胞移植」「さい帯血移植」といろいろな言葉があるの?

一言でいうと、「造血幹細胞移植」が移植の総称です。

骨髄移植には、血液を造るモトとなる造血幹細胞が必要です。移植の歴史の中では、最初に、このモトとなる「造血幹細胞」が豊富に含まれていた「骨髄」を採取して治療が行われました。その後の移植技術、血液学の進歩により、造血幹細胞の入手方法が、骨髄、末梢血からの造血幹細胞、さい帯血、ミニ移植と多様化します。そして、現在は造血幹細胞移植と総称されているのです。


Q5.それぞれの移植の特徴は?

 1)骨髄移植

血縁ドナーあるいはバンクドナーから採取された骨髄液を、そのまま患者の静脈内に輸血のように点滴注入し、造血幹細胞移植をします。
ドナーは入院し、全身麻酔をかけた状態で腰の骨(腸骨)から骨髄液を採取します。

 2)さい帯血移植

 さい帯血(さいたいけつ)とは、分娩後の胎盤とさい帯(ヘソの緒)に残った血液です。幼若で増殖能力に富む造血幹細胞が大量に含まれているさいたい血を移植します。さい帯血移植の利点が3つあります。

●保存されたさい帯血は、凍結保存されるため、ドナーを探す必要がなく、患者のタイミングにあわせた移植が可能
●患者とさい帯血のHLA抗原すべてが一致していなくとも移植が可能。
●移植後の免疫反応であるGVHDが、比較的軽い

臍帯血ドナーバンクからの移植となります。

 3)末梢血造血幹細胞移植

ドナーの骨髄からではなく、末梢血(まっしょうけつ)から採取した幹細胞を移植する方法です。末梢血とは、通常の血管を流れる血液のことです。この通常わたしたちに流れる血液中の造血間細胞は少ないため、生着に十分な細胞数は確保できません。造血因子であるG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を注射することで、一時的に造血幹細胞数を増やし、採取したものを移植に使用します。

 4)ミニ移植

50歳以上の方や主要臓器に障害のある方は今までの移植では肉体的負担が大きく、移植が難しいとされていました。ミニ移植とは、抗がん剤治療や放射線療法などの前処置を軽量化してできる造血幹細胞移植です。この移植法により前処置負担が減り、現在最高70歳までの患者が適用範囲となった新しい移植法です。

Q6.どうなったら移植成功というの?

A.移植日から約2週間後に、移植した造血幹細胞が働きはじめ、ドナー由来の造血が認められる状態になった状態を「生着(せいちゃく)」といいます。生着したら第一段階の成功です。


生着したからといってまだまだ安心できません。つぎに、移植後100日以内に発生する急性GVHD(移植片対宿主病)という症状が現れます。(現れない場合もある)これは、移植したドナーの白血球(リンパ球)が、患者の体内の各臓器を「他人=異物」として認識してしまい、攻撃することによっておこります。

急性GVDHで攻撃される主な臓器は、皮膚・肝臓・腸の3つです。皮膚の紅斑(こうはん)や水疱ができる、重篤な下痢、黄疸などの肝機能障害が主な症状です。これらの症状が落ち着き、容態が安定すれば無菌室管理が必要なくなり、一般病棟へ移ります。これらを乗り越え、経過良好であれば退院となります。

Q7、だれがドナーになれるの?

●自分:   自家移植
●血縁者:  兄弟姉妹でHLAという血液型が完全に一致した人→ 一致しない場合、
両親・子供(それ以外は非血縁者と同じ程度になる)
●非血縁者: 骨髄バンク(国内、海外)
●さい帯血: さい帯血バンク

Q8、家族や友人の面会はどうなるの?

病院によって面会ルールは異なります。妹の病院では家族の面会、泊まり込みが許可されていました。しかし患者は非常に感染しやすい状況なので、風邪をひいていたりと面会者が感染症にかかっている場合や、小さい子供の入室はよほどのことがない限り制限されます。(病院によります)

もし面会する場合は、以下のことに注意します。

●清潔な服装
●マスクをする
●髪を束ねる
●入室前に手洗いをしっかりする
●風邪をひいていたり体調が悪いときは控える
●身近な者が感染症にかかっている場合も面会を控える
●花束、生ものの菓子などもっていかない
●小さい子どもをつれていかない

あなたが面会する場所は、多くの白血病患者が治療をおこなっている病棟であり、患者それぞれ治療の段階が異なります。これらに十分注意して、自分が感染源とならないよう細心の注意をはらいましょう。

患者の血縁環境、病気の状況、白血病の型など、患者をとりまく移植の状況はさまざまです。どのような移植がよいのか、ドクターとしっかり話し合いながら本人とそして家族が納得する方法を決めます。



Q)命の保証がありますか?

この問いかけについては、「命の保証はありません」と骨髄移植した家族の視点からはっきりということができます。

しかし、妹は2回の移殖を乗り越え、現在は自宅療養中です。生きています。生活できています。

骨髄移植は、肉体的な苦痛を伴い、精神的にも非常につらい治療です。しかし、妹の場合、「生きるため」の選択肢は「移植」だけしか残されていませんでした。移植の選択については、「自分自身が納得し、最後は自分が決めること」これが一番重要なことだとわたしは思います。

あなたの大切なひとも、あなたも、一日の始まりには「今日も美しい日だ」と思えますように。